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2015年1月5日月曜日

[レビュー] 2015年最初の一台、FUJIFILM X100T のクラシッククロームは、懐かしくて新しい

新年が明け、お正月休み期間中に手に入れる最初のデジタルカメラは、本年1年しっかり使えるカメラにしたいと思う事が多い為、選択にもじっくり時間をかける事が多い。今回セレクトした一台も、初代モデルからしっかり使い込み、その熟成を知って舞い戻る事にした富士フィルムの X100T。外観こそ、初代 X100 やその後継機種である X100S から大きく変わらない様に見えるが、実際に操作すると、富士フィルムカメラ技術者の職人芸的に、各種機能の熟成が丁寧に図られている様子を理解出来る。

初代では「水平」を出す事から苦労していたアナログファインダーの撮影枠も、今ではリアルタイムに距離に応じて変化し、今回は右下に小さなデジタル表示迄付け加えて、細かいピントをアナログ光学ファインダーに小さく重ねてデジタルに確認出来る様になった。富士フィルムでは、このハイブリッドを「電子レンジファインダー」と呼ぶ事にしたらしい。このあたりは、目に見えやすい変化である。

それ以外にも、富士フィルムのサイトでも説明されている様に、ポジティブな改善が複数箇所。レンズ交換機 X-T1 譲りの、EVF (電子ビューファインダー)を見ながら縦型に構えると情報画面が縦用に自動変化する機能も奢られ、USB 端子から充電も可能になった。最近はスマホ用の充電器を常時携行している人も多いはずで、Sony の小型カメラは USB 対応が順次図られているが、富士もその便利さに気づいた様で嬉しい変化だ。是非業界全体でこの方向を進めて頂きたいものである。屋外での充電時のみならず、帰宅をしても電池を抜き差しする必要無く、USB ケーブル一指しで充電出来るのは便利である。

当方が最も気に入った本機種からの付加機能は、フィルムシミュレーションの「クラシック・クローム」。アナログ・カメラのリバーサルフィルムの様な色合いを再現してくれる。当方の flickr 作例写真中、空の色が少しエメラルド色になり、暗部も雰囲気を残して写り込んでいるものは、このクラシック・クロームで写した写真だ。アナログ・カメラ時代を思い出し、非常に気に入って、本日はこのモードを中心に撮影している。

AF(オートフォーカス)スピードは事前の期待程には体感的には速くなく、時々迷いも生じる気がするが、それでも初代 X100 よりずっと良くなっているのは間違い無い。まあ、普通に使える、という印象である。画角は X100 シリーズ伝統の、23mm、フルサイズ換算約 35mmのフジノン、f2 レンズ。初代から使われているこのレンズの描写とボケがまた素晴らしく、普通の景色を撮影しても、ポートレイトでも、味わい深く仕上がる。

昨今の APS-C 大型 CMOS 対応、単焦点高級コンデジブームの中で、X100 シリーズは SIGMA dp シリーズ等とともにその先鞭をつけ、かつ3代目迄時間をかけて熟成が進んでいる点が素晴らしいのだが、当方的なカメラジャンルの中で、このカメラは「情緒的なスナップ撮影をする」カメラと位置付けている。普通にありのままのスナップを撮影するなら、iPhone6 Plus でも、Panasonic の小型カメラでも OK だが、X100T を手にすると、クラシッククロームモードで、単なる昭和ノスタルジーだけではない、現代的かつ情緒的な写真、を撮影したいという渇望に駆られてしまう。不思議な一台である。

Nikon Df 等と同じ方向性で、クラシックなアナログ・カメラユーザーを大切にして、ダイヤル操作が主体となっているという事も、必要以上に無駄な機能が無くシンプルな点も良いのかもしれない。そして、仕上がる写真が、普通に撮影しても何故か情緒的に仕上がる。青空の色が、沈んだシャドー部に写り込んだ何かが、見るものに問いかけてくる。アナログフィルムで撮影した写真を現像が出来てから楽しみに見つめる様に、撮影画像の隅々にも種々面白い物語を後々発見出来る、そういうカメラなのである。

2015年は、不毛なデジカメ機能競争から卒業し、速く綺麗に写るだけのカメラから、X100T の様な「人間の感性に訴えかける何かアナログな温もりのあるもの」、を訴える事が出来るカメラが、更に登場するのかもしれない。実に楽しみである。

当方の FUJIFILM X100T 写真作例は、こちらの flickr album に追加して行きます。よろしければご覧あれ。









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